パンチング金型編 実践編
2-6)抜き加工時のワークの反り防止
タレットパンチプレスで多数の穴抜き加工を行った時、被加工材(ワーク)に反りが発生し、加工が 出来なくなったり、製品にならなかったりする場合があります。 (図1.参照)
図1.多数個抜きを行った場合の
ワークの反り
これは、パンチがワークを抜く際に、せん断力と同時に曲げ応力が発生する為です。
その後ワークが板押えから開放された時、ワーク内部の応力の為に板に反りが発生します。(図2.参照)
図2.パンチの抜き力と応力
対策
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1)
ガイド・ストリッパー及びダイのワーク押え面にテーパ加工を施し、反りと逆方向の応力を与えワークをフラットにする。(図3.参照)
通常 1°~2°のテーパをダイ側が凸、ガイド・ストリッパー側が凹になるように片側又は全周に付加します。
図3.ガイド及びダイに
テーパを付けた抜き加工
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2)
ワークを押える「板押え力」を強くすることによりワークに発生する曲げ応力を押え込み、反りを少なくする。
- 板押え力を強くする方法としては、
- a)ステーションを上げる事により上型スプリングの力を増す
- b)ガイド・ダイのいずれか、又は両方のワークの押え面積を少なくする事により、抜き周辺の面圧を高くする
- などの方法があります。(図4.参照)
図4.ワーク押え面積少なくして
面圧を上げる
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3)
パンチ及びダイの刃先を常にシャープな状態に保つ。
切刃の磨耗はせん断抵抗が増し、反りの原因となります。
早めに刃先の再研磨を行い、常に刃先を鋭利な状態にして下さい。
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4)
適正なクリアランスで抜き加工を行う。
大きすぎるクリアランスは、抜き加工の曲げ応力を増大させます。
適正なクリアラス あるいは少し小さめ目のクリアランスにする事により反りを少なくすることが出来ます。
- 5) 抜き加工はクランプから離れた穴より行う。(図5.参照)
図5.多数個抜きの加工順序
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6)
多本針金型を使用する。
多数個の同じ寸法の抜き加工を行う場合は、単発抜きより多本針金型にて複数の穴を同時に加工する方が反りは少なくなります。(図6.参照)
図6.多本針金型