パンチング金型編 実践編
2-12)ブランク抜きの反り防止
板材を打抜いた場合、一般的に抜きカスは湾曲します。 (図1.参照)
これは打抜き時にワークに剪断力と同時に曲げ力がかかり、それによりワークが塑性変形するためです。(図2.参照)
そこで、ブランク型の様に抜きカスが製品となる場合には後工程でレベラーに通す等の手直しが必要となる場合があります。
図1.打抜き時の抜きカスの湾曲
図2.パンチの抜き力と応力
対策
1)外周抜きを行う
製品を打抜くのではなく製品の外周(輪郭)を打抜く方法で、一般的にこの方法が採用されています。
この場合、製品はミクロジョイント等でつないでおき、加工後に分離します。 (図3.参照)
図3.ミクロジョイントされた製品
2)クリアランスを小さくする
クリアランスが大きくなる程ワークにかかる曲げ力が増し、湾曲が大きくなります。
ブランク型の場合、適正クリアランスより少し小さめのクリアランスをお勧めします。
但し、厚板の場合にクリアランスを小さくし過ぎますと金型への負担が増し、金型の破損の原因にもなりますのでご注意下さい。
3)再研磨を早期に行う
磨耗した切刃で打抜いた場合も曲げ力が増し、湾曲がより大きくなります。
早期に再研磨を行いシャープな切刃で打抜きを行って下さい。
4)ウレタンキッカーの出代を調整する
ブランク型でもブランク製品が抜き落とされずに浮き上がる現象(いわゆるカス上り)を防止する目的として、刃先形状や寸法によりパンチにウレタンキッカーをお付けしている場合があります。
それによりワークの材質・板厚によってはブランク製品に反り等の変形が発生する場合が考えられます。
そのような場合は、ウレタンキッカーの出代調整又はウレタンキッカーの除去を行って下さい。(図4.参照)
図4.ウレタンキッカーの出代調整
5)逆押えを付けた金型
金型に逆押えを付け背圧をかけながら抜き、ワークの湾曲を矯正する方法です。 (図5.参照)
この工程で半抜きを行い、別の工程で抜き落とします。
図5.逆押えを付けた金型
6)板押え力を強くする
ステーションサイズをあげて板押え力を増すことにより、
ワークの曲げ力を押え込み変形を少なくする。
7)製品内部に穴がある物(ワッシャー状の物)はより大きな湾曲が発生する
また、製品の外周(輪郭)により近いところに穴がある場合は外周と穴の間の部分にネジレが生じる場合があります。(図6.参照)
穴抜きはタレパン以外の後工程で行うか、穴付近の輪郭部を先に抜いておいて下さい。
図6.製品の外周付近に穴がある場合
8)ブランク型にシャー角は付けない
シャー角付のパンチで打抜きを行うとシャー角によりブランクが変形します。
パンチ端面(ワーク当たる面)は常にフラットに研磨して下さい。